イギリス植民地化のラングーンにおいて、Rowe & Company(東洋のハロッズ)やSofaer & Company(アジアのSelfridge)とともに富裕層向けの輸入品を扱う百貨店として生活を華やかに彩ったこの建物は、かつてWatson & Son Limitedが入居していた。Thomas Swalesによる設計で1905年ごろに建てられたと言われている。
なお、同人の設計による建築はこの他Sofaer's BuildingやFytche Square Building、St. Paul's High School(拡張部)等がある。
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Watson & Son Limitedは1888年にFrank Ernest Watsonにより設立された。
設立当初はMerchant Streetに店舗を構え、馬具やブーツの製造販売を行っていたという。
その後1905年ごろに現在の場所に新たに店舗を構え、海外からの輸入品を扱う百貨店として東洋の庭園都市と呼ばれたかつてのラングーンを彩る存在となっていく。
その取扱い品目は多岐にわたり、生業であった馬具やブーツに加え海外から輸入された時計や食器、更には車なども取り扱っおり、Phayre Street(現Pansodan Road)を挟んで反対側にはショールームもあり、車などはそちらで展示されていたという。
日本軍によるビルマ進駐に伴い1942年店舗は閉鎖され、結局戦後も再開されることはなかった。
しかしビルマ独立後はそれに変わりビルマ人実業家であるU Tun Seinが設立したSein Brothersがこの建物に入居することとなる。
U Tun Seinは1909年にラングーンで生まれ、Methodist English High School(現BEHS No.1 Dagon)にて学んだ後、カルカッタの大学に進み1931年にラングーンへ戻ると父親とともに絹の取引に従事した。
こうして戦前よりラングーンで事業に携わり、Watson & Sonの繁栄ぶりをその目で見ていた彼は、百貨店における立地の重要性を強く感じ、この建物を購入し自身もSein Brothers Department Storeとして百貨店経営を行っていく。
Watson & Son同様に海外からの輸入品を取り扱い、戦後のビルマにおいて32のエリアに販売網を有するなどその繁栄ぶりはWatson & Son以上であったのかもしれない。
1962年にネウィン(Ne Win)によるクーデターとそれに伴う社会体制の変化により、全ての国内事業が国有化されると、Sein Brothersも国有化されこの建物も接収されてしまう。それ以降はMyanma Insuranceが入居するなど、政府関連の事務所として使用されていたという。
現在は税務局の事務所として使用されてはいるが、入口には今も「SB」の文字が残っており、当時の繁栄ぶりに思いを馳せることができるかもしれない。
参考:
Testaments of Yangon's Glorious Past(Myanmar Times)
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