名古屋ミャンマーパゴダ(Mittadhika Pagoda / မေတ္တဓိကစေတီတော်)

2020/10/13

愛知 日本のミャンマー

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Address : 愛知県名古屋市中川区新家2-1304


名古屋にはパゴダがある。
名古屋駅前にあるパゴダを模したと噂されるモニュメントではない。
市内に点在するパゴダの名を冠したアパート群でもない。
正真正銘のパゴダである。

2015年、名古屋市中川区にミッタディカパゴダと名付けられたパゴダが建立された。
その落慶法要は5月4日に執り行われ、在日ミャンマー人250名ほどが集まったという。


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法務省の外国人統計によれば2019年12月の調査で在日ミャンマー人は32,049人となっている。最多はもちろん10,275名の東京都で、実に1/3近いミャンマー人が東京都に在住していることになる。
では2番目に多い都道府県はどこになるのだろうか。
そう、愛知県である。

参考:


その数は1,838人と全体に占める割合としては少ないかもしれないが、パゴダの名を冠したアパートが名古屋市内に3つも存在したり、名古屋駅前のモニュメントがパゴダを模しているという説がまことしやかに囁かれているなど、かねてより愛知県とミャンマーとの繋がりについては識者により指摘がなされていた。

参考:


さて、そんな愛知県の県庁所在地である名古屋市に2015年にパゴダが建立された。
このパゴダの建立には一人の日本人僧が大きく関わっている。パゴダと同じ中川区にある日蓮宗妙本寺住職の馬島浄圭師だ。
彼女は1991年に初めてシャン州の難民キャンプを訪れて以来、30年近くにわたってミャンマーの難民支援に関わってきたという。
そんな彼女が発起人となり2012年にパゴダ建立が発願された。

当時、本国ミャンマーでは民主化が進むなど大きな変化が起こっており、それに伴い日本在住のミャンマー人たちの関係性も変わりつつあったという。そうした変化の中で、様々な立場の在日ミャンマー人たちがパゴダを建立するという一つの目的のもと、心を一つに協力し合うことができれば、という思いがあったという。
また彼女が住職を務める妙本寺にはミャンマーから取り寄せた仏像があったが、これを納める場所が必要であると感じていたことも理由の一つであるという。

こうして、在日ミャンマー人の中からメンバーを選び7名のパゴダ建立実行委員会を結成。そのメンバーの中で、留学生として名古屋の大学で建築を学んでいたミャンマー人が中心となり、パゴダのデザインを考えたという。
馬島師が所有する仏像が、コンバウン朝後期のものであったことがデザインの決め手となった。仏像とパゴダは同時代のものにすべきだ、ということでコンバウン朝第10代王のミンドン王(King Mindon 在位:1853-1878)が1868年にマンダレーに建立したクトードォパゴダ(Kuthodaw Pagoda:ကုသိုလ်တော်‌ဘုရား)を模したものに決定された。

こうして2013年10月21日に中川区にある馬島師所有の土地にて地鎮祭が行われ、本格的にパゴダの建立が始まる。
まずパゴダの材料とその資金を集めるべく、先述の建築を学んだミャンマー人がミャンマーへと向かった。現地で寄付を募るとともに、材料となる大理石や飾りの注文を行い、またパゴダに奉納するために高僧(Masoeyane Sayadaw)の袈裟をその弟子から譲り受けた。またShwedagon Pagoda、Botahtaung Pagoda、Kyaiktiyo Pagoda、Kyaikkhami Pagodaとミャンマーでも有名な4つのパゴダの土も、奉納するために持ち帰った。

ミャンマーから船便で送られた材料が船積書類の不備で受け取りまで時間を要したり、ミャンマー産の材料が日本の建築基準を満たせなかったりと様々なトラブルが発生したが、その都度解決を図って計画は着実に進んでいった。
実際の建築工事の段階で大きな役割を担ったのが、妙本寺の信徒の1人で建築士の加藤剛次氏である。このパゴダの施工自体も彼が勤務する株式会社アサヒホームクラフトが担当しており、図面の作成から細かい装飾のレイアウトなども彼によって考えられたという。
2014年12月7日には、先述の袈裟や土、また宝石類などをパゴダに奉納するThar Pa Nar(ဌာပနာ)という式典が執り行われ、パゴダ建立計画は最終段階へと進んでいく。


そして2015年5月4日、発願から3年の歳月を経てミッカディカパゴダが完成した。ちなみにこの5月4日はクトードォパゴダの落慶日でもある。


こうして建てられた高さ7mのパゴダは、東海地方在住ミャンマー人のコミュニティの中心となりつつある。
現在は定期的にイベントを開催しており、特にダディンジュの満月には「名古屋ミッタディカパゴダ灯明祭り」として大々的にお祝いを行っている。
なお、パゴダの建立に合わせて敷地奥にはゲストハウスが建設されたが、普段は施錠されておりこの地がミャンマーのパゴダのような日常的な祈りの場・憩いの場となるためにはまだまだ課題は多いかもしれない。
しかし、近い将来名古屋が高田馬場に次ぐ第二の「リトルヤンゴン」となる日が来るのかもしれない。そしてその日が来た時、「リトルヤンゴン」の中心は間違いなくこのミッタディカパゴダになるだろう。











2020/09撮影

2019年灯明祭りの様子
Facebookより




参考:




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散る散るミチル

ヤンゴンのコロニアル建築を中心にミャンマーのニッチな観光情報をまとめています。
日本帰国後は日本にあるミャンマー関連のものを中心に取り扱ってます。

あと最近仏舎利ハンターに転職して全国各地の仏舎利塔を巡っているので近いうちにこちらもまとめる予定。

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