ミャンマーのコロニアル建築に興味がある方にはお馴染みのJohn Begg。
イギリス領インド帝国の顧問建築家(Consulting Architect of Government of India)であった彼はインド帝国内に数多くの建築を残した。かつてインド帝国を構成する一州であったビルマも例外ではなく、その州都ラングーンには彼による建築が3つ残っている。
そんなわけで本日は彼が残した3つの建築特集です。建築家で見比べるのもまた一興でしょうか。
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John Begg
John BeggはスコットランドのBo'nessという町で1866年に生まれた。Edinburgh Academyで学んだ後、Hippolyte Jean Blanc(ゴシック・リヴァイヴァル建築で著名)のもとで経験を積み、ロンドンへと移住する。
当時のイギリス本国において有望な若手建築家として名を馳せた彼は1896年に南アフリカに移り住み最初の海外キャリアを開始したが、1899年に勃発した第二次ボーア戦争(the Second Boer War : 1899-1902)のため早々に本国へと帰国することとなる。
そして1901年にボンベイ(現ムンバイ)の顧問建築家(Consulting Architect of Government of Bombay)としてインドへ着任し、1906年にはJames Ransomeの後任としてインド政府の顧問建築家となる。
John Beggとその助手であるGeorge Wittet(1878-1926)はインドサラセン様式(Indo-Saracenic Style)の発展に大きく貢献したといわれ、ボンベイの郵便局などが代表作として知られている。
ちなみにインドサラセン様式とはゴシック・リヴァイヴァル建築や新古典主義建築にサラセン(イスラム)様式を加えた建築を言い、イスラム建築の中でも特にムガール建築の装飾が取り入れられることが多かった。
こうしてビルマ州を含むインド帝国内に多くの建築を残した彼は1921年に任期を終え、スコットランドへと戻っていった。以降は1922年から1933年までの間、Edinburgh College of Artで教鞭をとるなど後進の育成に尽力、1937年にスコットランドにて死亡した。
ざっくりとJohn Beggについてはこんな感じですね。
というわけで続いてヤンゴンに残る3つの建築を見ていきましょう。
Government Press Buildings
Address : 228 Theinbyu Road, Botahtaung Township1906年着工、1912年完成。ラングーンにおける最初のJohn Beggによる建築。
一階部分(ドーリア式)と二階部分(イオニア式)で異なった様式を取り入れているのが特徴的。
建設当初はインドから届いた事務用品配給のための保管場所として使用され、後、政府発行の官報などの印刷所となった。
詳細はこちらの記事参照。
Printing & Publishing Enterprise (Government Press Buildings)
Custom House
Address : 132 Strand Road, Kyauktada Township1912年着工、1915年完成。
中央部分の塔屋が印象的な建築。
ラングーン港における税関として、建設から現在まで変わらぬ役割を担う。
詳細はこちらの記事参照。
Custom House
Central Telegraph Office
Address : 125-133 Pansodan Road, Kyauktada Township1913年着工、1917年竣工。
ラングーンにおけるJohn Beggによる最後の建築。施工会社はClark & Greig。
3つの建築の中で最も特徴的な外観を有する、かつての電信局。
詳細はこちらの記事参照。
Central Telegraph Office
こうして並べてみると正直共通点を見出すのは難しいな、と思います。
そして前述したようにJohn Beggと言えばインドサラセン様式ですが、この3つの建築にはその特徴がほとんど見られないのが不思議なところ。
当時のラングーンはインド系住民が50%を超えており、ここが「ビルマ」だからインドサラセン様式を用いなかった、とはちょっと考えづらいですし。
逆に帝国の東端にあたる辺境地としてそこまで力を入れなかった…というのも国際港としてのラングーンを考えればそれも違うのかなと。
まぁそこらへんは詳しい方のご意見をお待ちしております。
そんなわけでヤンゴンお散歩部はこれからも様々な視点からヤンゴンを見つめていきますのでお楽しみに!
参考:
DSA Architect Biography Report
インド・イスラーム建築史
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