Myanma Economic Bank Branch 1 (Lloyds Bank)

2018/01/25

Kyauktada

t f B! P L
Address : 43-45 Pansodan Road, Kyauktada Township, Yangon



1921年頃に完成した3階建ての建築物。設計者不明。
建設当時はCox & Companyのラングーン支店として、その後Lloyds Bankのラングーン支店を経て現在は国営のMyanma Economic Bank Branch 1として営業中。

Cox & Company

もともとこの建物はCox & Companyのラングーン支店として建設された。
Cox & Companyは1758年にYorkshir生まれのRichard Cox(1718-1803)により設立された。
オーストリア継承戦争(War of the Austrian Succession : 1740-1748)に従軍するリゴニア伯(John Ligonier, 1st Earl Ligonier : 1680/11/7-1770/4/28)からの依頼により、軍の宿営地等、進軍の手配を行ったのが始まり。
その後もCoxはリゴニア伯の右腕として頭角を現していく。
1757年にリゴニア伯が近衛歩兵連隊の大佐に任命され、翌1758/5/25にリゴニア伯より軍に関する戦費の調達・管理、宿営地や衣類の手配、その他関連する問題の対処を担当する"Military Agent"に任命された。これをもってCox & Companyの設立とされている。

その後、近衛歩兵連隊のみに留まらず、その他のイギリス軍部隊への業務も行うようになり、また銀行業へ参入するなど事業を拡大していく。
アメリカ独立戦争(American War of Independence : 1775-1783)やナポレオン戦争(Napoleonic Wars : 1803-1815)などにより莫大な利益を上げ、19世紀においては大英帝国の繁栄に合わせるように事業を拡大、20世紀に入ると第一次世界大戦(World War I : 1914-1918)において大戦特需を享受し栄華を極めた。
しかしながら第一次世界大戦の終結とともに、その繁栄にも陰りが見え始めることとなる。
戦後は1919年にAlexandria、1921年にラングーンへ新規出店を行ったり、インドでの強いネットワークを有していたHenry S. King & Company(1816年設立)を買収(1922年10月 : Cox & Kings Companyに改称)するなど、事業の立て直しを図ったが、結局1923年2月に、折からの業績悪化に耐えきれず、Lloyds Bankに買収された。
なお、Cox & Kings Companyは現在もロイズのグループ会社として存続している。

Lloyds Bank

一方のロイズ銀行(Lloyds Bank:現Lloyds Banking Group)はイギリスでも最も歴史ある銀行の一つで、その設立は1765年まで遡る。
1765年6月、BirminghamのJohn Tayor(1711-1775)とSampson Lloyd II(1669-1779)は個人銀行業を開始する。
1844年のピール銀行条例(Bank Charter Act 1844/Peel Banking Act of 1844)により、商業銀行としての道を歩み始めたロイズ銀行は、1865年に株式会社となり、1884年にロンドンのBarnetts Hoares & Company(1677年設立)とBosanquet, Salt & Company(1770年設立)を買収しロンドンへ進出。
1889年にLloyds Bank Limitedと社名を改め、1912年にロンドンへ本店を移す。
上記の2行以外にも19世紀の間に多数の銀行を買収・合併し規模を拡大していき、本店をロンドンに移すころにはイギリスの5大銀行の一角を占めるまでになった。

なお1884年の2行との合併はロイズ銀行の歴史の中でも最も重要な合併であったといわれている。
ちなみに現在のロイズ銀行の黒い馬のシンボルマークはこの時に合併したBarnetts Hoares & Companyのもの。

1923年2月に上述の通りCox & Kingsを買収したことで、ロイズ銀行としては初のビルマ支店をラングーンに開設。ロイズは1941年までにこのラングーン支店を含む2つの支店をビルマ内に有していた。
なおこの際の買収はCox & Kingsが倒産することでの金融不安を危惧したイギリスの中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England)からの要請によるものである。
ラングーン支店開業後は1929年に始まった世界恐慌の影響もあり業績が悪化するが、救済措置での合併であったものの、結果的にCox & Kingsの主要業務であった"Military Agent"により、第二次世界大戦中、ロイズ銀行は大きな利益を得ることになる。

1942年に日本軍がラングーンを占領するとロイズ銀行はラングーンを離れインドのLahoreに避難し業務を続けた。
戦後の1945年12月、ロイズ銀行はラングーンへ戻るが、当然のように銀行内にあったものはほとんど略奪されており、すっかり荒廃していた。
しかしながらわずか2ヶ月足らずの1946年1月23日には業務を再開する。

1948年1月にビルマが独立を達成した数ヶ月後、ロイズ銀行とビルマ新政府との間で今後の銀行における雇用に関する問題が発生した。
ビルマ政府はロイズ銀行の退職するスタッフの後任としてビルマ人を採用することを要求したが、ロイズ銀行は自行の採用において当局の制限を受けることに難色を示した。
ビルマ政府としては外資企業における自国民の採用を通じて、自国民の教育・育成を進め、必要以上の外国人労働者の増加抑制を図る意図もあった。

こういった諍いが原因かはともかく、結果的にロイズ銀行はビルマから撤退することになる。
正確な時期は不明だが1963年の銀行国有化の際には既に撤退済みであり、また、"Burma Yearbook 1957-1958"により同住所でのロイズ銀行の営業が確認されていることから、1958-1962年の間に撤退したと考えられる。

現在

現在は国営のMyanma Economic Bank Branch 1として営業中。
青と白の外観は2012年に塗り替えられたものでその他のMEB支店も同様の色となっている。
なお、隣の建物(Myanma Economic Savings Bank Branch 1)はこの区画で唯一の非コロニアル建築となっている。。

ダウンタウンに存在するMEBはこの他Branch 2 (Chartered Bank) / Branch 3 (Bank of Bengal) / Branch 4 (Netherlands Trading Society) / MFTB (HSBC)があるがなぜかこのBranch 1だけはYangon City Heritage Listに掲載されていない。
MEBマーク
唯一の非コロニアル建築
 2018年1月撮影


参考文献:

Fiery Dragons: Banks, Moneylenders and Microfinance in Burma (Nias- Nordic Institiute of Asian Studies Monographs)
Sean Turnell
Nordic Inst of Asian Studies







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Author

散る散るミチル

ヤンゴンのコロニアル建築を中心にミャンマーのニッチな観光情報をまとめています。
日本帰国後は日本にあるミャンマー関連のものを中心に取り扱ってます。

最近は仏舎利ハンターに転職して全国各地の仏舎利塔を巡っております。夢は「新版 日本の仏舎利塔」の発刊と故郷に仏舎利塔を建立すること。

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