ミャンマー全土で200万匹以上、ヤンゴンに限っても10万匹以上いるといわれる野良犬。
報道によれば2017年にヤンゴン総合病院(Yangon General Hospital)で狂犬病ワクチンを接種した患者は16,274名に上ったという。
狂犬病はミャンマーにおいて、避けられない大きなリスクの一つだ。
そしてこのリスクは、かつては更に大きいものであった。
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1915年、ラングーンにパスツール研究所(Institut Pasteur/Pasteur Institute)が設立された。パスツール研究所は「近代細菌学の開祖」といわれるルイ・パスツール(Louis Pasteur:1822-1895)による狂犬病予防法確立を記念し1887年にパリで設立された、医学・公衆衛生の発展を目的とした研究機関である。
当時、ビルマを含むイギリス領インド帝国内において、狂犬病を含む公衆衛生の改善は植民地当局にとって大きな関心事の一つであった。
そうした中、1900年にイギリス帝国内で最初のパスツール研究所がインド北部のKasauliに設立された。その後も1907年にCoonoor(マドラス管区:Madras Presidency)に、そして1915年にラングーンにも設立されることとなる。なお、インド帝国内にはその後Shillong(アッサム州:Assam Province)にも1917年に設立され、最終的に帝国内に4つの研究所を有することとなる。
こうして1915年にラングーンに設立されたパスツール研究所は、植民地下のビルマにおいて、そして戦後ビルマがイギリスから独立してからも、この国の医療・公衆衛生の中核として大きな役割を果たした。
1962年のネウィン(Ne Win)によるクーデターの後、1963年10月1日に国内のその他3つの研究所とともに統合されて National Health Laboratory(NHL:国立衛生研究所)となる。
この時に統合されたのはPasteur Instituteの他、
・Harcourt Butler Institute of Public Health
・Chemical Examiner's Laboratory
・Public Analyst Laboratory
の3つで1966年にはこれにRangoon City Corporation Laboratoryも加わった。
こうしてパスツールの名はビルマから失われてしまったが、その役割は変わることなく現在までミャンマー医療及び公衆衛生の中核研究所として存在し続けている。
また近年では他国との協力関係も確立されてきており、新潟大学や国立国際医療研究センター、またKOICA(Korea International Cooperation Agency)などとも共同研究を行っている。
加えて2014年にはついにパスツール研究所ともECOMORE Projectと呼ばれる共同プロジェクトが開始され、半世紀の時を経てパスツール研究所が再びミャンマーに戻ってくることとなった。
参考:
ECOMORE Project(公式)
厚生労働省 狂犬病
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