世界平和パゴダを訪問して感じたこと。

2020/04/30

日本のミャンマー 福岡

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2020年1月、世界平和パゴダを訪問しました。

参考:
世界平和パゴダ(World Peace Pagoda)

世界平和パゴダについては該当記事を読んでいただくとして、訪問して感じたことを書いていきたいと思います。

世界平和パゴダは1958年に建立された、日本で唯一ミャンマー人僧が常駐するパゴダです。
建立当初はビルマ戦線復員兵を中心とした奉賛会により運営がなされていましたが、時間の経過とともに奉賛会会員の減少による資金難に陥っていきました。
そして2011年に一時休館となり、8カ月の休館期間を経て地元門司の有志たちにより2012年8月に再開。
この再開時に中心的な役割を果たしたのが株式会社サンレーです。

参考:
株式会社サンレー(公式)

同社の公式サイトにもあるようにCSRの一環として世界平和パゴダへの支援を行っており、曰く「戦没者の慰霊はもとより、世界平和のモニュメント」で「今後、広島の原爆ドーム同様、『世界文化遺産』への申請も視野に入れ、施設の意義と重要性を広く発信して」いき「無縁社会を乗り換えるための拠点にも活用できるように」支援をしていくそうです。

さて、このパゴダを訪問しての第一印象は「荒廃している」でした。

天井には穴
2012年の再開から8年、率直に言って管理運営がなされているようには感じませんでした。
もちろん常駐ミャンマー人僧侶の生活費が年間400万円ほどかかると言われており、パゴダ自体の大規模な改修になかなか着手できないという事情はわかります。また既に3回ほど(2013年/2015年/2018年)慰霊祭を行っており、その際にはミャンマーから僧侶を招いているのでそういった費用もかなり負担していることも理解しているつもりです。

ただそれらを踏まえてももう少しなんとかならないものかな、という印象を受けるのも事実。
㈱サンレーの代表取締役社長である佐久間庸和(ペンネーム:一条真也)氏のブログ(一条真也の新ハートフル・ブログ)にはたびたびこのパゴダのことが取り上げられており、「無縁社会を乗り越えるための新しい『世直し』の拠点」であったり、「『有縁社会』のシンボル」といった具合にこのパゴダへの期待を述べているのが散見されている中で、現在のパゴダの状況は少々違和感を覚えるところ。
そもそもこのパゴダが休館した理由の一つに「老朽化した僧院」というのがあったんですよね、当時の新聞記事では僧院の再建費用が2,000万円程度必要だったとか。
決して小さな金額ではないのですが、8年という歳月が経過した中でそもそもの問題すら解決できてないってどうなんだろうな、と思ってしまう。あ、内部の確認をしていないので、再建ではなく改装で対応した、というのであれば申し訳ないです。

老朽化した僧院
2015年には安部昭恵首相夫人の講演会があり、その参加費(参加費:5,000円/参加者:約400名)を施設改修費に充当したり当地で開催された合唱コンクールやマルシェの収益の一部を運営費に充てたり…まぁ後者の収益は微々たるものだとは思いますが。
宗教法人世界平和パゴダの理事を務める企業も地元の中小零細企業が多く、資金的に難しいのもわかります。ただ主体となっている㈱サンレーは開示している決算内容を見る限りもう少し支援できないものでしょうか、なんて思ってしまいます。

参考:

もちろんCSRの一環で行っていることなのでそんなに金は出せないよ、というのもわかりますが、ブログ等々で発信している内容とのギャップに違和感を覚える、というところでしょうか。

ちなみに㈱サンレーは2016年の時点でミャンマー進出計画があったそうです。


「実は北九州市門司区にある国内唯一のミャンマー式仏教寺院「世界平和パゴダ」の支援をお手伝いしている縁で、婚礼用衣装店の出店計画が進んでいて、これを皮切りに後々は現地の寺院とコラボしたウエディング事業も検討していまして、ひいてはほかの東南アジアへ広がればいいと思っています」
ふくおか経済Vol.329 ◆総力取材 新年抱負インタビュー トップ141人に聞く 2016年の戦略より)


2020年現在その後についての情報が見当たらなかったので進出計画がどうなったかは不明です。全然関係ないけど先述の一条真也の新ハートフル・ブログにおける「世界平和パゴダ」の言及数は
2013年:47件
2014年:23件
2015年:13件
2016年:3件
2017年:6件
2018年:1件
2019年:3件
2020年:1件(4月30日まで)
という感じで推移しています。ちなみにこのブログは毎日更新されております。
2018年10月にパゴダ再開後3度目の慰霊祭(パターン祭)を開催しましたが、ブログに一切の言及がないのも寂しいですね。
世界平和パゴダ住職であったウ・ケミンダ(U Kemminda)の葬儀から始まった㈱サンレーと世界平和パゴダの縁が、少しずつ薄れているように見えてしまいます。このパゴダが皮肉にも「無縁社会」のシンボルになってしまうのでしょうか。


と、若干厳しい物言いになってしまいましたが、そうは言っても現状パゴダ存続のためにかなりの費用をかけていただいていると思いますので、それ自体本当に素晴らしい活動だと思っています。
入場料200円しか払ってない僕が口を挟む余地は皆無ですね。


さて、ついでなのでその他気になる点も書き残しておきましょうか。
まずこのパゴダ、宗教法人化しています。
で、この宗教法人世界平和パゴダの代表役員がネミンダ(U Neminda)になっているんですね。ウ・ネミンダは2016年に来日して、恐らく2019年に帰国しています。代わりに来日して現在常駐しているのがU PanditaとU Sobhanaの2名。
別に代表役員が日本在住であるという要件はないと思うんですが…というか単純に変更登記をしていないんじゃないでしょうか。もちろんウ・ネミンダが現在も住職を務めている、もしくはミャンマーに帰国したが実務上のことを遠隔で行っているということであれば何ら問題ない話なんですが。
一応宗教法人の代表役員変更登記は変更から2週間以内に行わないといけない、ということにはなっているので代表役員の変更がすでに行われているにも拘らず変更登記を行っていないならそれは問題ですね。

続いてこの宗教法人の目的の2に「僧院その他施設の維持」とあるんですが、まず僧院の所有者がいまだに市原瑞麿(パゴダ建立の発起人)になってるんですよね。この人もうずいぶん前に亡くなってるんです。
ついでに言うと建物に抵当権ついてます。条件付所有権移転の仮登記もされてます。とはいえ抵当権の設定金額は30万円かつ昭和43年11月の金消契約なんで既に該当債権は消失してるとは思いますけど。
僧院が建っている土地は宗教法人世界平和パゴダの所有になっているんですが上物が市原氏の所有。これ何か意図があるんでしょうか。

まぁこれに関しては宗教法人設立時の話なんで何とも言えないところはあるんですが、ただこのことに気づいてないわけはないだろうしそもそも宗教法人の財産目録上で僧院がどういう扱いになってるのか気になるところ。


といろいろ書きましたが、活動の透明化が図られればよいなと思います。
ちなみに宗教法人法により、宗教法人の書類や帳簿は
・閲覧希望者が信者、その他の利害関係人。
・閲覧することに正当な利益を持っている。
・閲覧請求が不当な目的でない。
の3つの条件が満たされれば閲覧が可能だそうです。奉賛会のメンバーになればみられるってことでしょうか。どなたかもし奉賛会メンバーの方がいらっしゃったら是非閲覧請求をしてもらいたいですね。


さて、長くなりましたがただの戯言です。
1人のミャンマー好きとして、世界平和パゴダの未来が明るいことを祈っております。

宗務所も老朽化が著しい
戒律同は床が抜けそう



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散る散るミチル

ヤンゴンのコロニアル建築を中心にミャンマーのニッチな観光情報をまとめています。
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