14th Blue Plaque.
入口上部に描かれたメノーラー(Menorah:6枝の燭台)が、この建物がシナゴーグであることを物語る。
ヤンゴンのみならずミャンマーにおいても唯一のシナゴーグは1896年に建てられた。
インド人街に位置しながら100年以上に亘り存続を続けてきたこのシナゴーグの存在自体が、このヤンゴンという街の宗教・文化・民族の多様性を象徴しているかのようである。
2016年6月、Yangon Heritage Trustにより14番目のBlue Plaqueに指定された。
スポンサードリンク
ビルマにおけるユダヤ人の移住は主に、当時オスマン帝国のバグダード(Baghdad)からきたユダヤ人(セファルディムと呼ばれるスペインにその起源を持つユダヤ人)とイギリス領インド帝国南西部にあるコーチン(Cochin、現Kochi)からきたコーチン・ユダヤ人(Cochin Jews:古代ユダヤ人の子孫と言われる)に大別される。
どちらもイギリスの植民地政策によるビルマへの進出に伴い19世紀中頃から移住をはじめ、チーク材や、綿花、米、また当初はアヘンの貿易などを行っていた。
植民地当局との繋がりを持った彼らはすぐにラングーンにおいて商業的に成功し、また政府役人にも採用されるなど、その存在感を高めていった。
実際に20世紀初頭にはラングーン及びバセイン(Bassein、現Pathein)の市長がユダヤ人であったという記録も残っている。
商業的にも、Isaac A. Sofaerを代表するように大きな成功をおさめ、当時の繁栄ぶりは彼の建てたSofaer's Buildingからも伺うことができる。
1854年にバグダードから来たユダヤ人たちによりビルマで最初のシナゴーグが建てられたという。
その後1893年から新たなシナゴーグの建設が始まり、1896年に完成。
またダウンタウンの東側(91st Street近辺)にはユダヤ人墓地も造られ、現在までに700人ほどのユダヤ人がその地に眠るという。
その後も増加するユダヤ人人口に合わせ、1932年には2つ目のシナゴーグも建てられたというが、残念ながらこちらは現存していない。
最盛期には2,000人を超したといわれ(ラングーンの国勢調査によると1901年:508名、1911年:750名、1931年:1,069名)財政界で繁栄を謳歌したユダヤ人たちも、1941年から始まる日本軍によるビルマ侵攻とともに苦難の時代を迎えることとなる。
彼らはイギリス側のスパイと見なされ、そのほとんどがビルマを離れていった。
半数近くがカルカッタへ逃れ、そのまま定住し戦後もビルマへ戻ることはなく、戦後戻ってきたユダヤ人たちも1948年に建国されたイスラエルへ移住していったという。
なお、ビルマとイスラエルの関係はその建国当時より密なものであり、東南アジア諸国で最初にイスラエルを国家承認したのがビルマであったといわれている。
1955年にはビルマ初代首相であるウー・ヌ(U Nu)が国家元首として世界で初めてイスラエルを公式訪問したり、同様にイスラエル側からも1961年には首相のDavid Ben-Gurionが、1959年には大統領のYitzjak Ben-Zviがビルマを公式訪問している。
軍事政権下においてもイスラエルはビルマにとって武器供給国であり、それ以外でも農業や教育といった様々な分野で協力関係を築いている。
先日エルサレムにアメリカ大使館が移転した際の式典にミャンマーが参加したのも長年続く2国間の関係があったからかもしれない。
参考:
The Countries That Attended The US Embassy Opening In Jerusalem
ビルマのユダヤ人にとって、日本軍の進駐に次ぐ2度目の苦難は1962年3月にネ・ウィン(Ne Win)がクーデターにより政権を握ったことから始まった。
ビルマ式社会主義を標榜した新たなビルマは財産・産業の国有化を進め、全てを奪われたユダヤ人たちはそのほとんどがネ・ウィンの治世の間にビルマを離れている。
上述した2つ目のシナゴーグもこの際に閉鎖されており、また1969年に最後のラビがビルマを離れて以降、現在までこの国に常駐のラビは存在していない。
こうして現在までヤンゴンに残っているユダヤ人は20名を割るほどまで減少してしまった。
しかしながら、曽祖父の代にバグダードからラングーンにやってきたと言われるSamuels家が、代々このシナゴーグの管理人としてこの小さなユダヤ人コミュニティを守り続けている。
2015年5月29日に先代のMoses Samuesl(ミャンマー名:Than Lwin)が亡くなった後は、息子であるSammy Samuels(ミャンマー名:Aung Soe Lwin)が引き継ぎ、彼らと同じく100年以上前にバグダードから持ち込まれた2つのトーラー(Torah:ユダヤ教の律法書)とともに、次の世代へ伝える役割を果たしている。
Open Hour : 09:30-14:00(日曜休み)
100年以上前にバグダードから持ち込まれたというTorah |
天井にはダヴィデの星 |
ハヌッキーヤと呼ばれる8枝の燭台 |
「シャローム」のヘブライ語 |
Lexington Books
スポンサードリンク
0 件のコメント:
コメントを投稿