正面に霊宝富士を、南側には日蓮宗総本山である身延山を望む標高577mの日向山。
1986年(昭和61年)、その山頂に高さ26mの仏舎利塔が湧現した。塔内にはネパールなどから贈られた3粒の仏舎利が奉祀されているという。
この仏舎利塔が建つ日向山は、古くより「身延道」と呼ばれ、身延山へと通じる重要な道の1つにあたる場所であった。また日蓮上人の弟子で、日蓮六老僧の一人である日持ゆかりの祖師堂が古くから存在していた。しかし太平洋戦争の影響により維持管理ができなくなったことから1945年(昭和20年)に取り壊され、以降は一帯も荒廃するに任せていた。
その復興に取り組んだのが、山麓にある妙法山定林寺住職、㓛刀貞如師(くぬぎていにょ)である。
㓛刀師は1970年(昭和35年)ごろより復興事業を開始したという。当時、山中は全く管理されておらず、現在の建立地にたどり着くこと自体が困難な状況であった。そうした中、まずは草刈りや参道の整備など、小さな部分から少しづつ手を入れていったという。
復興事業を進めていく中で、㓛刀師は「日蓮上人が最も喜ばれることは何か」と自問し、仏舎利塔の建立を思い立ったという。そしてその塔に奉納する仏舎利を譲り受けたいと、1983年(昭和58年)8月、既に全国各地に仏舎利塔を建立していた日本山妙法寺山主の藤井日達上人を訪ねた。
その際、藤井上人より翌月ウィーンで行われる仏舎利塔の落慶式への同行を勧められ、渡欧することとなった。ウィーンでは落慶式典の前に藤井上人から法話を受け、「願いをかなえたければ、修行を積み、神仏にほめられる生き方をしなければならない」と諭される。㓛刀師はその言葉を聞くために渡欧したと思ったほどの感銘を受け、願いを抱くだけであった自分自身の姿勢を省みるとともに、仏舎利塔建立への覚悟を改めて固める契機となった。更に渡欧中、高熱に倒れ異国の地で生死の境をさまよう体験をしたことで、命を懸けてでも仏舎利塔建立の誓願を成就させるという強い決意を固めたという。
帰国後の1984年(昭和59年)7月30日、早速奉賛会が結成され、本格的に仏舎利塔の建立が始まった。翌1985年(昭和60年)の10月24日に地鎮祭が行われ、1986年(昭和61年)12月8日に本体が完成。1987年(昭和62年)7月16日には本尊を勧請し、同年10月25日、奉賛会結成から約3年という短い期間で落慶法要を迎えることとなる。
高さ26m、直径27m、鉄筋コンクリート造りの仏舎利塔にはネパールで最古の仏教寺院ともいわれるスワヤンブナート(Swayambhunath)から贈られたもの、田子の浦仏舎利塔の守塔である日本山妙法寺の大内綜順師から贈られたものなど、計3粒の仏舎利が奉祀された。また、仏舎利と共に発願者である㓛刀師の法華経の写経も納められた。
総工費は約1億5000万円で、設計は甲府市の金子設計事務所が、施工は奉賛会の会長を務めた望月勇が代表を務める有限会社山勇工業が担当した。また勧請された合掌印を結んだ青銅製の釈尊像は、京都の大仏師である長田春山による作品。
落慶法要には、ネパール、ラオス、ソ連、ペルー、インド、エクアドル、イラク、バングラデシュ、スウェーデン、レバノン、ドイツ民主共和国(東ドイツ)、ポーランド、コロンビアの計13か国から、大使・公使およびその家族を含む約50名が参列し、導師は日蓮宗総本山である身延山久遠寺の第90世法主岩間日勇猊下が務め、一般参加約1,600名を数えるという大々的な落慶式典となった。
仏舎利塔が落慶して以降も、日向山の復興事業は順次進められていき、2005年(平成17年)には日向山仏陀ホールが完成、2007年(平成19年)には建立20周年事業として外壁の総塗り替え並びに釈尊像の金箔張替え、域内の改修・整備が行われ、盛大な20周年記念大祭も行われた。また落慶以降毎年例大祭も行われている。
2022年(令和4年)には再び仏舎利塔の外壁塗り替え工事が行われた。その他直近では2024年(令和6年)に境内に「広島長崎原爆犠牲者供養塔」が建立されている。
また毎年元旦には初日の出を拝むために多くの人々がこの地を訪れている。
なお、発願者の㓛刀師は北海道旭川市にも仏舎利塔を建立する誓願を立てており、既に用地の確保は済み建立費用の半分程度が浄財により集まっているという。
参考文献:
広報ろくごう No.147(昭和62年11月号)
甲斐ヶ嶺 No.63
じべた No.33
宝珠 No.391(令和4年3月号)
山梨日日新聞 1987/10/26・1997/11/05・2003/11/18・2024/07/29
日蓮宗新聞 2016/10/23・2018/10/28・2024/07/28
日向山仏舎利平和宝塔
Address : 山梨県西八代郡市川三郷町岩間4367-3
2021/04撮影
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